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練功十八法を用いた運動療法について


1、はじめに

私は、今から20年程前に呉式太極拳を教わりました。
太極拳は、非常に緩やかな動きであるため、各個人・個人の体力に会わせて行うことが出来る非常にすばらしい武術です。私にとっての太極拳は、頭部から玉のような汗が吹き出し、Tシャツの中の背部や腹部の皮膚表面に汗がタラタラと流れているのを感じ、終了後には、膝がガクガクと震えて膝に力が入らない、と言うような非常に厳しい鍛錬でした。 このような太極拳を行う前に、必ず行っていたのが、練功十八法でした。
当時の指導者からは、「練功十八法は、日本で行われているラジオ体操のようなもので、太極拳の前に行うことにより、身体中の緊張がほぐれ、より滑らかな太極拳が出来るようになるすばらしい中国式のラジオ体操です。」と聞かされていました。

しかしながら、当時の私にとって、練功十八法があまりにも簡単で何の不自由もなく行うことが出来ていましたので印象がほとんどありませんでしたが、20年後の現在、50歳の声を聞いた今、この練功十八法を行ってみますと、以前同様、簡単に行うことが出来なくなっているではありませんか。それどころか、関節部に疼痛を覚え、屈曲・伸展・内転・外転・回旋能力が極端に低下していることを思い知らされました。その原因は、単なる運動不足というものではなく、加齢による関節・軟部組織の変性によるものと考えられます。しかしながら、何故か、この練功十八法を行った後は、関節の稼働が滑らかとなり、身体の緊張がほぐれ、さわやかな感覚を持つことを体験することができました。

2、目的

練功十八法を行った後、何故、関節の稼働が滑らかとなり、身体の緊張がほぐれ、さわやかな感覚を持つことが出来るのでしょうか。
これは、「練功十八法」そのものが、運動療法として非常に適していることを示唆していることになります。すなわち、練功十八法を取り入れた施術並びに生活指導を行うことにより、外傷によって障害を持った人達に対しては、より健常者に近い状態に戻ってもらい、加齢によって関節の可動域が狭くなっている高齢者の方々に対しては、いつまでも健康を維持してもらうことが可能と考えます。
従いまして、今回、練功十八法の個々の動作方法とその効果をまとめ、最後に個々の動作に対して私なりの考察を加えていくことにより論文を作成することとします。

3、練功十八法の構成

練功十八法は、中国の伝統医学(中医学)と西洋医学の結合、医療と体育の両立という内容を持っています。また、練功十八法は、ストレス・慢性病の多い現代人に即した合理性のある中国の国家公認体操の一つとされている医療保健体操です。現在では、上海市を中心に中国各地に広がってきています。 練功十八法は、前三組十八法、後三組十八法に分かれ、全部で六組三十六法から成り、系統的にまとめられています。前段は、頸、肩、腰、足などのこりや痛みの治療と予防の効果を目的とし、後段は、関節炎、腱鞘炎、内臓器官の機能障害などの斬新的な治療と予防効果を目的としており、各組ごとに明確な目的を持っています。 一法ごとの動きは左右対称の動作を繰り返すので、理解しやすく、また習得もしやすくなっています。十八の動作をすべて行わないと治療効果が満たされないわけではなく、必要に応じて一法だけの動作をとりだして練功しただけであっても、時間をかけて、じっくりと、くり返し行うことにより効果が得られます。あせらず正確に身につけて、内容を理解し、継続的に行うことが大切です。

4、練功十八法の由来と発展

練功十八法は、前項でも記載したとおり、医療と体育の相方の結合により治療を目的としてできたものです。漢方の医師である荘元明氏が、中国古来の「導引」(※1)「五禽戯」(※2)「八段錦」(※3)等の養生法と武術を整理参考にし、さらに有名な医師であり武術家であった王子老師の草案した体操を基礎として、経験を通じ完成させた自己鍛錬の方法です。 二千余年前には、すでに中国では養生法としての導引術が創造されており、これが中国医療体育の芽生えでした。当時導引は筋骨を揺すり、関節を動かし、気血を巡らすという意味を持ち、関節の痛みを治療する作用も有していました。 春秋時代に有名な哲学家荘子(※4)の「刻意篇」の中に、中国最古の医学書「皇帝内経」のなかには、導引がいかに優れた治療法であり養生法であるかが記されており、早くから古代の医学家が重視していたことを、うかがい知ることができます。漢末の名医華佗(※6)は導引の理論と経験を元にして、当時盛んに行われていた六禽の戯を手直しして「五禽戯」をつくりました。虎、鹿、熊、猿、鳥の躍動的な動作姿勢を取り入れ創編したものです。 1973年、長沙の馬王椎三号漢墓から出土した医学書の中に二篇の導引の書があり、中国最古の導引図です。 随唐時代には導引は広範囲に応用され、朝廷より重要な医療の手段として認められていました。隋唐以降になると、導引から派生した各種の健身術は多く名称も八段錦、十二段錦、易筋経、太極拳、気功などと非常に多彩になりました。しかしこの頃になると病気を治す作用そのものは次第に軽視され薄れてしまいました。 練功十八法は、これらの導引、五禽戯、八段錦を整理し更にマッサージ治療方法を加え、新しい角度から編み出された「病気があれば病気を治し、病気がなければ病気を予防する」という病気を治すという作用を再びよみがえらせた体操として生まれ変わったものです。

5、練功十八法の動作及びその効果

人体の部位を上部・中部・下部の三組に分け、前段の第一法から第十八法までの動作及びその効果について記載していきます。 第一組 頸・肩の痛みを予防・治療する練功法

(第一法から第六法までの動作)
−頸・肩のこりや痛みに−
第一組は、人体の上部(頭部から肩にいたる一帯)を動かす動作から校正されています。一般に肩こりとして現れる症状も、よく観察すると複数の原因がからみあい、影響し合っていることがわかります。僧房筋・胸鎖乳突筋等の頚部周辺筋肉のツリ、神経圧拍による腕・指のしびれ、頭重・耳鳴りなど一連の悩みを解消して、筋肉や粘着した軟部組織をほぐし運動機能を正常に戻す予防と治療の体操です。 頚部・肩部の痛みは、一種の総合症で、次の三種の疾病を比較的よく見ます。
・ 首のすじちがい
・ 頚椎総合症
・ 肩関節周囲炎
練功十八法を行う準備の姿勢は、身体は自然に直立、両足は閉じて、頭頚部は正しく真っ直ぐに、下あごを内側に引き。胸腹部はゆったりし、肩と腕は緩めて垂らし、両手は軽く大腿部外側につけ、精神を集中し目は前に向けて、呼吸は自然を保った姿勢から始まります。

第一法 頸項争力(ケイコウソウリキ)
この動作は、首の筋肉と関節の鍛錬を目的とします。

(動作)両足を肩幅よりやや広めに開いて立ち、両手で腰をはさむ(親指は離して後ろに当てる)。僧房筋を意識しながらゆっくりと行います。
@頭を出来るだけ左に回します。A準備姿勢に戻る。B頭を出来るだけ右に回します。C準備姿勢に戻ります。D頭をあおむかせ、天を見ます。E準備姿勢に戻ります。F頭を前にまげ、地を見ます。

(効果)寝ちがえなどで首を痛めたとき。
慢性的な頸部組織の障害など

第二法 左右開弓(サユウカイキュウ)
この動作は主に、頚肩部と上背部の筋肉及び運動機能を鍛錬し、特に菱形筋の収縮作用を強化します。

(動作)両足を肩幅よりやや広めに開いて立ち、両手の親指と人指し指が連なる線で円を作るようにして、顔の前におきます。手掌は前に向き、手掌と顔の距離は約30Cm、視線は親指と人指し指の間の中心におきます。
@両腕を左右に開いて体側に持っていきながら、徐々に手掌を拳に変えて握ります。拳の内側は前に向けます。同時に頭を左に向け、視線は拳越しに前方を見ます。肘関節は下に垂らします。A準備姿勢に戻ります。BCは@Aと同じ。但し、方向を逆にします。

(効果)頚肩部・上背中のこりや痛みと硬直、腕のしびれ、胸がつかえて苦しい時など

第三法 双手伸展(ソウシュシンテン)
この動作は、あんまの「抜伸」という方法を参考にしてできたもので、主に肩部と背部の筋肉(棘上筋)を鍛錬します。
(動作)両足を肩幅よりやや広めに開いて立ち、両肘を屈曲し、手掌は拳を握り肩峰の高さに保ちます。拳の内側が前を向きます。 @拳を広げると同時に両腕を上に突き伸ばし、手掌を前に向け、目は右指先を追います。A準備姿勢に戻ります。BCの動作は@Aの動作と同じだが、方向が逆になります。
(効果)頚肩部・腰背部のこりと痛み、腕が上がらないといった肩関節の機能障害など

第四法 開闊胸懐(カイカツキョウカイ)
この動作は、両上腕を上にあげたり、外に開いたり、外に回したりして、肩関節運動の幅を大きくすることにより、頚肩部・大円筋・小円筋・烏口腕筋などの動きを鍛錬します。
(動作)両足を肩幅より広めに開いて立ち、下垂した両手を自然に前で交差させます。@通常は左手が前になりますが、症状のある側の腕を前にします。交差させた状態で両手を頭上に挙げ、目は手背を見ます。A両腕を体側で弧を描くように回内して、元の準備姿勢に戻ります。 (注)交差させた状態で手掌を体に向けて頭上へ挙げ、さらに続けて腕を両横に回内するに従って自然に、目はまず左を追い、次の動作で右を追います。交互に手の先を目は追うようにします。
(効果)肩関節周囲炎および機能障害。頚肩部・腰部の痛みとだるさがあるときなど。

第五法 展翅飛翔(テンシヒショウ)
この動作は、肩関節の回転運動を円滑にするために考案されたもので、あんまの「揺法」を参考にして、受け身の運動を自分で行う自己鍛錬の動作にしたものです。
(動作)両足を肩幅よりやや広めに開いて立ちます。
@両肘を体の後側に張り出す(鳥が羽を広げる)動作をして、肘を眉より高く上げ、両手背が向き合い、手指の先を下に垂らします。両方の手の甲は向かい合うようになります。A両腕を下におろすときは、両肘を下げながら両手指を顔の前で山形に立てる様にして手掌が向かい合います。ゆっくり息を吐き出しながら下ろして元の準備姿勢に戻ります。
(効果)肩関節の硬直、上肢の機能障害など。

第六法 鉄臂単堤(テッピタンテイ)
この動作は、肩関節の運動を増加し、肩甲下筋・大円筋・小円筋・広背筋などの筋力を鍛錬し、上腕を後ろに回す機能を強化します。
(動作)両足を肩幅よりやや広めに開いて立ち、@右肘関節は屈曲して手背を背部下方に付けます。左肘関節伸展位で左上腕を外転させ、90度まで挙上したところで手関節伸展位とし、外転180度まで挙上し、手掌で天を支えます。目は挙上している左手背部を見ます。A準備の姿勢に戻ります。B-Cの動作は@-Aと同じですが、動作が逆で腕を変えて行います。
(効果)肩の関節が硬直し、動きが不自由なとき。頚肩部・腰部にこりと痛みがあるとき。胃が張ったときなど。

第二組 腰背部の痛みを予防・治療する練功法
(第七法から第十二法までの動作)
 −腰背部のこりや痛み−
第二組は人体の要、中部にあたる腰を主とした動きから構成されています。 腰部の関節の動きをなめらかにし、血液循環をよくして筋肉を強化し、機能を回復するとともに、脊柱の矯正も容易にします。腰や背中のこりは、内臓の機能低下と必ず結びつきます。ほぐしてゆくことで、胃腸・肝臓・腎臓などを活性化することができ、さらに強精の効果も期待できる体操です。 腰痛は、腰椎の両側の軟部組織の疼痛を指す場合が多く、「十人中九人は腰痛がある」と言われているほどです。腰痛の多くは、腰のねじれによる損傷・使いすぎによる人体軟部組織に生じる損傷・風寒湿による腰部の痛み・椎間板ヘルニアなどが原因です。 この組の練功は、腰痛疾病を対象にしており、その主な目的は関連筋肉の痙攣や癒着を取り除いて症状を軽減し、運動機能を改善するものです。また、脊椎側彎を矯正し腰椎の正常な曲がり角度に回復するなどです。 第七法 双手託天(ソウシュタクテン)
この動作は、主に、腰の両側の筋肉と仙棘筋・腰方形筋・広背筋を鍛錬し、又、脊柱を伸ばしたり横に曲げたりして骨や筋肉を調整する効能があります。
(動作)両足を肩幅よりやや広めに開いて立ち、両手の指を下腹部の前で手掌を上にして組み合わせます。 @両腕を徐々に上に挙げ顔の前あたりで手掌は上に向け天を支えます。A両腕で上体をつり上げるようにして上体を左真横に倒します。Bもう一度Aを繰り返します。C前腕を回内させながら身体の横から下ろし、もとの準備姿勢に戻します。D〜Gは@〜Cと同じですが、今度は上体を右に倒します。
(効果)頚部・腰部の硬直。
肩部・肘部の関節と上体に角度ができる。身体が回るなど

第八法 転腰推掌(テンヨウスイショウ)
この動作は腰椎の両側の筋肉(多裂筋等)及び腰椎の回旋能力を鍛錬して、腰筋の強化や腰椎の安定性を高め、腰椎側彎などに役立ちます。
(動作)両足を肩幅よりやや広めに開いて立ち、両手は拳を握って腰に付けて回外位。上体を真っすぐにし、体幹軸(重心)が左右に移動しないように行います。 @右手を前方に押し出し・手掌を開き・前腕回内位・手関節伸展位・母指外転位にしながら上体を左に回し、目は左後方を見ます。同時に左肘関節を左後方に引きます。A準備姿勢に戻ります。B-Cは@-Aと同じです。但し、方向が逆になります。
(効果)頚肩部・背部・腰部などの軟部組織の疲労、腕のしびれ、筋肉の萎縮を伴うこりと痛みなど

第九法 叉腰旋転(ソウヨウセンテン)
この動作は第四・第五腰椎関節を滑らかにし、特に腰椎を引き伸ばし、仙棘筋筋力を強化し、腰椎の生理強度を維持、或いは矯正するのに役立ちます。
(動作)両足は、膝を曲げないで真っ直ぐに伸ばし、足裏は大地から離さないで、肩幅よりやや広めに開いて立ち、両手を腰にあてます。母指を前方に出し、両手で骨盤を押し動かすようにして、時計の針の方向に二回転させます。その後、逆の方向に二回転させます。前面に腰が向く時は両肘をしめる要領で行うと滑らかに回ります。顎を軽く引き寄せて、頭が極端に後方へ倒れないようにします。
(効果)ぎっくり腰及び腰部の慢性的な痛み・鈍痛・生理痛、腰に負担がかかる姿勢をとり続けたとき、尾骨一帯が痛むときなど

第十法 転臂弯腰(テンピワンヨウ)
この動作は、主に、胸椎・腰椎の棘上靱帯・棘間靱帯・後縦靱帯・仙棘筋・広背筋及び腰椎の椎間関節運動機能を強化鍛錬します。
(動作)両足を肩幅よりやや広めに開いて立ち、前腕回内位で手掌は下腹部前面で交差させます。@両上肢を肘関節伸展位で前方から屈曲180度まで挙上し、視線は手背を見る。腹部を前方に突き出さないこと。A前腕回外位で両上肢を外転90度まで下げます。手掌は上を向きます。B前腕回内位にして手掌を下に向かせ、腰に力を入れ上体を前に倒します。C膝を伸展させた状態で、手掌を下垂し、重ねて両指を大地に触れ、手掌を交差させます。頭部を下げないで顔は大地を向かせます。D上体を起こし最初の準備の姿勢に戻ります。
(効果)頚部・背部・腰部のこりや痛みなど。

第十一法 弓歩插掌(キュウホソウショウ)
この動作は、主に腰部・臀部・下腿部の筋肉及び脊椎回旋機能を鍛錬します。
(動作)真っ直ぐ立った姿勢から両足を大きく開き、両手は拳を握って腰部の両側に付けます。@上体を左に回し、左膝関節を屈曲し、右手掌を開いて左外側やや上方へ空中に差し込むがごとく突き出します。右足を動かさないで左足尖を左方向に向かせます。右膝関節伸展位とします。A準備姿勢に戻ります。B-Cは@-Aと同じです。但し向きが逆になります。
(効果)頚部・背部・腰部・上肢・下肢のこりや痛み・しびれなど。

第十二法 双手攀足(ソウシュバンソク)
この動作は、主に腰部棘間靱帯・棘上靱帯・後縦靱帯を引き伸ばし、仙棘筋・広背筋・大腰筋・下肢の腓腹筋等を鍛錬します。
(動作)足幅は肩幅で自然体になります。
@下腹部前面、両前腕回外位で指を組みます。
A挙上しながら顔の前あたりで回内位にしながら 肘関節を伸展させ天を支えます。視線は手背を見ます。
B腰部に力を入れて上体を前に曲げ手掌を足背に触れます。(膝関節は伸展 位)C準備姿勢に戻ります。 (効果)腰部・下腿部の軟部組織の疲れ・腰が曲がらないとき・脊柱のゆがみ大腿部のしびれ・屈曲伸展が不自由なときなど

第三組 臀部・下肢の痛みを予防・治療する鍛錬法
(第十三法から第十八法まで動作)
−臀部・大腿部の痛みに−
第三組は人体の土台、下部にあたります。土台をしっかり安定させるため、臀部と下肢の運動から構成されています。股関節・膝関節等の関節をなめらかにして、筋肉に力をつけ、臀部・下肢部の軟部組織の粘着や痙攣を取り除き、運動機能の回復及び強化する目的があります。また脊椎と骨盤の変形矯正にも効果がある体操です。 臀部・下肢の痛みとは、臀部及び大腿部の後側・下腿部の後外側・踵・足背などの範囲の疼痛を主とした総合症を指します。臀部・下肢の軟部組織損傷による梨状筋損傷総合症・臀部上皮神経損傷・腰椎椎間板ヘルニアなどがあります。

第十三法 左右転膝(サユウテンシツ)
この動作は、下肢の三大関節を滑らかにし、特に膝関節の運動機能を鍛錬することを目的とします。併せて、大腿四頭筋及び腓腹筋等の力を強化して、膝関節内外側靱帯の柔軟性を養い、膝関節の安定作用を高めます。 
(動作)真っ直ぐ立った姿勢から上体を前に曲げ、両手で膝をつかみます。 両膝関節を曲げ、時計の針の方向にまわします。膝関節が後ろに行ったときは伸びます。まず、時計の針の方向へ4回行い、その後、逆の方向に4回行します。
(効果)膝関節・足関節の痛み・脱力感など

第十四法 仆歩転体(フホテンタイ)
この動作は、主に、内転筋群と大腿四頭筋筋力を鍛錬し、下肢の外転と内転の機能を強化すると共に股関節の安定性を高めます。
(動作)足を大きく開いて立ちます。両手で腰をはさみます。@左膝関節を屈曲すると同時に上体を右へ45度まわします。右膝関節は伸展位。A準備姿勢に戻ります。B-Cは@-Aと同じ。但し、方向が逆になります。
(効果)腰部・臀部・大腿部の痛み、股関節・膝関節・足関節の機能障害、下肢筋肉の萎縮など。

第十五法 俯蹲伸腿(フゾンシンタイ)
この動作は按摩の「抜伸法」を参考としてできたもので、主に、大殿筋・大腿四頭筋・半膜様筋・半腱様筋・肛門挙筋の筋力の鍛錬をします。従って、坐骨神経痛に良い効果があります。
(動作)まっすぐ立ちます。
@上体を前に曲げ、両手を膝におきます。A膝を曲げてうずくまります。両手は膝においたままですが、指が向き合うようになります。B両手の手掌を足背につけ、膝関節を伸展します。C準備の姿勢に戻ります。 (効果)股関節や膝関節が思うように動かず、下肢の屈伸が困難なとき。下肢筋肉の萎縮・坐骨神経痛など。

第十六法 扶膝托掌(フシツタクショウ)
この動作は基本練習法の馬歩の型を導入したもので、主に、大腿四頭筋の力を鍛錬し、下肢三大関節の安定性を強化します。
(動作)両足を肩幅と同じに開いて立ちます@上体を前に曲げ、右手で左の膝蓋骨をおさえます。A上体を左に回しながら膝関節屈曲、左上肢を身体の前から挙げて天を支える姿勢になります。重心は両大腿部の中間におきます。目は手背を見ます。B上体を前へ曲げながら、両膝関節を伸展し、左手で右の膝蓋骨をおさえる。C準備姿勢にもどります。D-Gは@-Cと同じです。ただし、方向が逆になります。
(効果)頚部・肩部・腰部・下肢のこり、痛み、下肢筋肉の萎縮など。

  第十七法 胸前抱膝(キョウゼンホウシツ)
この動作は主に大殿筋と下肢の伸筋群を鍛錬し、身体のバランス能力、股関節の屈曲機能を高めます。
(動作)そのまま、真っ直ぐに立ちます。@左足を前へ一歩踏み出し、身体の重心を左大腿部に移動し、右足の踵部を挙げると同時に両上肢を前から上に挙げます。手掌を向き合わせ頭部を仰向かせ、胸を張ります。A両上肢を身体の横から下ろすと同時に右膝を挙げ、左膝関節伸展位で両上肢でかかえて胸のあたりに引き寄せます。B@の姿勢に戻る。C準備姿勢に戻ります。D-Gは@-Cと同じです。ただし、方向が逆になります。
(効果)臀部・下肢のだるさ・痛み、屈伸機能障害など。

第十八法 雄関漫歩(ユウカンマンポ)

この動作は主に下肢の筋肉の動きを強調させることを目的としています。
(動作)@左足を前へ一歩踏み出して、まず踵を地に着け、徐々に足底全体を着けると同時に、右足の踵を挙げ、重心を左大腿部に移動します。A右足の踵を下ろします。右膝関節を軽度屈曲し、重心を右大腿部へ移動し、同時に左足尖を挙げ、踵だけ地面につけます。B右足を前へ一歩踏み出し、重心を右足の大腿部に移動し、左足の踵をあげます。C左足の踵をおろし、左膝関節を軽度屈曲し重心を左大腿部に移動し、右足尖をあげます。D重心を前の右大腿部に移動し、左足踵をあげます。E左足の踵を着け、左膝関節屈曲し重心を左大腿部に移動し、同時に右足尖をあげます。F左膝関節伸展、右足を一歩後に下げ、右膝関節を軽度屈曲し重心を後の右大腿部へ移動します。G準備姿勢に戻ります。
(効果)下肢の痛みと関節の運動機能障害など。

6、考察
私自身が、前項に記載した第一法から第十八法までの動作を行った結果をふまえて、考察を記載します。 すべての動作に共通していえることは、呼吸を整えて、ゆっくりとした動作で予防又は治療対象となる筋肉・靱帯や関節部位に意識を集中して行うことにより、より効果的な結果を得ることができると考えます。 また、長期間仰臥位等であった方々にとっては、筋肉の萎縮並びに関節の拘縮が、相当程度進んでいると考えられますので、あせらないで、時間をかけて、ゆっくりと練功十八法を行い、弱った部位を回復させていただきたいと思います。また、この動作をくり返し行っていただくことにより、弱った部位が次第に回復していくことをご自身の身体をもって体験していただけるものと考えています。

第一法 頸項争力(ケイコウソウリキ)
頭部の回旋・屈伸運動により、胸鎖乳突筋・僧房筋等の頚部周辺の筋の収縮・伸展が、ゆっくりと時間をかけて行われ、それに併せて、眼球が左右上下に動かされるため、眼球の運動筋群の収縮・伸展も行われ、血流が改善されます。それによって、頚部や肩部の緊張がとれ、眼の疲れがとれたように感じていただけると思います。これは、頚肩部の疼痛の治療や予防にもなり、視力の回復や予防にもつながりますので、是非、実践していただきたいと思います。 例えば、デスクワーク等長時間同じ姿勢を継続して行う場合にも、時間を取っていただいて、この動作を実践していただくことで、筋緊張がとれ、疲れがとれていくことを感じていただけると思います。

第二法 左右開弓(サユウカイキュウ)
両上腕を開く動作により、上腕上端部に付着した前胸部の筋肉(大胸筋・小胸筋・三角筋(前面)・烏口腕筋)が伸展され、上背部では、僧房筋中間部・棘下筋・大円筋・小円筋が収縮され、頭部を回旋する動作により、胸鎖乳突筋・僧房筋上部が収縮・伸展されます。この動作の中で、特に、肩甲骨間(けんびき)の菱形筋が収縮することにより、血流の改善が行われ、肩甲間部の疼痛の治療及び予防に効果があると思います。また、この動作と同時に眼球を左右に動かすめ、眼の疲れがとれ、大きく胸を広げて深呼吸するため、リラックス感も味わっていただけると思います。

第三法 双手伸展(ソウシュシンテン)
肩関節を屈曲して両上腕を挙上伸展する動作で、肩関節に疾患が無い状態であれば、何の問題もありませんが、肩関節周囲炎等の疾患を持っていますと、この動作を行うことは困難であると思います。言い換えると、肩関節周囲炎の予防並びに治療にもなると考えます。 また、大きな深呼吸を行いながら行うため、リラックス感を味わうことができるとともに、頭部並びに視線をゆっくりと上方に向ける運動を行うため、頚肩部の筋肉や眼の疲れをとるとともに視力の回復にも効果があると考えます。 第四法 開闊胸懐(カイカツキョウカイ)
肩関節を大きく動かして、上腕上部・肩甲骨・鎖骨に付着する筋肉の収縮・伸展を行い、関節可動域を大きくするための運動です。また、視線が手背を追うため、眼球運動を行うと共に、頭部を上方・側方に運動させるため、頚肩部筋肉の収縮・伸展による血流改善が行われます。 大きくゆっくりとした深呼吸を行う動きであるため、全身のリラックス感を味わうことができる動作であると考えます。また、終了後には、眼球・頚肩部周辺にすがすがしさを感じるようになると考えます。

第五法 展翅飛翔(テンシヒショウ)
上腕を伸展位から上腕骨頭を大きく回転させながら上腕の内旋運動を行い、外側から前方に移動させる運動で、肩関節の拘縮を防止するために非常に有効な運動になりますが、拘縮がある疾病者にとっては、難しいと思いますが、肩関節拘縮の予防並びに治療に対し、非常に効果があると考えます。 また、一回ごとの動作の最後には、息を吐きながら、両手掌を下に押し下げる動作を行いますので、気を沈めて精神の安定を図ることができる動作でもあると考えます。

第六法 鉄臂単堤(テッピタンテイ)
手背を肩甲骨部に付着させる動作は、肩関節過伸展、回内位となるため、肩関節に疾患を持つ者にとっては、疼痛のため、大変難しい動作になると思いますが、この動作を繰り返し行っていただくことにより、症状が改善されていくことを理解していただけると思います。 この動作は、肩関節だけでなく、眼球や頭部の回転運動も行われるため、各筋肉の血流が改善され、視力減退並びに頚肩部痛の予防・治療効果が期待されるものと考えます。

第七法 双手託天(ソウシュタクテン)
体幹の側屈により、反対側の内腹斜筋・外腹斜筋と多裂筋が伸展されていくのを心地良く感じることができます。また、回数を重ねることにより、側屈角度が増加していきますので、腰椎の関節可動域が増加してくることも感じ取れると思います。 また、両手掌を組んで天を支える動作をすることにより、肩関節周辺の筋肉の血流改善も図ることができ、深呼吸による全身のリラックス感を味わうことができると考えます。

第八法 転腰推掌(テンヨウスイショウ)
腰椎を回旋させる運動であり、肘関節を後方に引いた側の直立起立筋から多裂筋にかけての筋収縮が強く感じられ、軽微な疼痛と心地よさを感じることができます。腰椎の椎間関節の関節可動域を増加させ、腰椎周辺の部組織の柔軟性と強化を図り、腰椎周辺の疼痛を軽減させる効果があると考えます。

第九法 叉腰旋転(ソウヨウセンテン)
腰椎を回転させることにより、直立起立筋等の腰椎の周辺にある筋肉の伸展・屈曲を行うため、血流が改善され、腰部の疼痛の改善効果が期待されます。特に、同じ姿勢を長時間持続して作業を行う場合等に行うことにより、腰痛の予防と治療効果が増大すると考えます。

第十法 転臂弯腰(テンピワンヨウ)
肩関節を動かしながら、主となる動作は、腰椎の屈曲であるため、多裂筋の伸展動作となり、同部に心地よさを感じることができます。また、膝窩までにおよぶ坐骨神経のライン並びに上肢下垂のために上背部(広背筋・僧房筋・菱形筋)が伸展され心地よさを感じることができます。 また、この動作は全身運動であり、腰部屈曲のために重心が移動しますので身体のバランス感覚を養うことができると考えます。

第十一法 弓歩插掌(キュウホソウショウ)
大殿筋・大腿四頭筋の強化と腰椎の回旋による腰部周辺筋の強化を行うことになりますが、上腕骨の大結節・小結節に付着する上背部の筋肉(広背筋・小円筋・大円筋・肩甲下筋)を過伸展させることになるため、上背部に心地よさを感じます。この動作自身は、比較的簡単な動作ですので、リハビリの初期段階で実施するとより効果が発揮できると考えます。

第十二法 双手攀足(ソウシュバンソク)
上肢を挙上させて、天を支える体制をとりますので、肩関節の運動だけでなく、脊柱起立筋から多裂筋に至るまでの筋肉が伸展されるとともに、大きな深呼吸を行うため、ゆったりとしたリラックス感を味わうことができます。その後、腰椎の過屈曲動作となり、多裂筋が過伸展され、坐骨神経も伸展されることになるため、膝窩の心地良い疼痛も感じることができます。最後の動作で、上肢下垂による上背部の筋肉が伸展され、腰背部全体の疼痛が軽減されると考ます。 この動作により、重心が前後に移動しますので、ある程度の筋力が無いと全身のバランスを取ることができません。すなわち、この動作により、該当筋肉の増強と全身のバランス感覚を養う効果が期待できると考えます。

第十三法 左右転膝(サユウテンシツ)
この動作は、膝関節を屈伸させるすべての筋肉並びに膝関節部に付着するすべての靱帯、内側・外側半月板の緩やかな動きとなりますので、運動を行う前や激しい運動の後に行うとストレッチ効果があると考えます。 さらに、股関節・膝関節の屈曲位で行うため、大殿筋・中殿筋・大腿四頭筋・ハムストリング・腓腹筋の筋力強化を図ることができると考えます。 すなわち、膝関節に疼痛がある場合は、この動作を行うことにより、関節の稼働が滑らかとなり、膝関節周辺の筋肉が強化されることにより、膝関節を補強し、疼痛の軽減に効果があると考えます。

第十四法 仆歩転体(フホテンタイ)
この動作は比較的簡単ですので、リハビリの初期段階で行うと良いと思います。特に、股関節・膝関節の屈曲により、大殿筋とハムストリング並びに大腿四頭筋を強化するための動作ですので、長期間使用せずに萎縮した筋肉のリハビリを行うために採用すると効果があると考えます。

第十五法 俯蹲伸腿(フゾンシンタイ)
これは、坐骨神経を過伸展にさせる動作ですので、身体の硬い方には難しいと思いますが、坐骨神経を過伸展させますので、臀部・大腿後部や膝窩の坐骨神経のラインに軽微な疼痛が発生します。すなわち、この動作を繰り返し行うことにより、坐骨神経痛の予防並びに治療に効果があると考えます。また、大殿筋・大腿四頭筋を強化し、足関節・膝関節と股関節の可動域を増加させる効果があると考えます。

第十六法 扶膝托掌(フシツタクショウ)
大腿四頭筋・大殿筋の筋力を強化させる作用があり、体幹・上肢・頭部の動きにより、重心が前後左右に移動し、バランスが崩れやすくなるため、バランス感覚を養う効果もあると考えます。 但し、大腿四頭筋の緊張が非常に強くなる動作であるため、リハビリの初期段階では難しいと考えられますので、無理をせず、可能な範囲で行うことが大事と考えます。

第十七法 胸前抱膝(キョウゼンホウシツ)
股関節・膝関節の過屈曲動作を行うとともに大殿筋を伸展させる効果があり、片足立ちで長時間を要しますので、下肢の筋肉(特に、中殿筋)だけでなく、全身の筋肉を作用させて、全身のバランス感覚を養う効果があると考えます。但し、この動作は、ある程度の筋力がついていないとできない動作ですので、リハビリの初期段階では難しいと考えます。

第十八法 雄関漫歩(ユウカンマンポ)
片足を前後に移動させることで、足底部に伝わる微少な皮膚感覚の刺激から、重心の変化を読み取り、体幹を支えるためにどの筋肉をどのように使用していくのを養う。すなわち、非常に、バランス感覚を養う効果のある動作であると考えます。 さらに、この動作により、歩行に携わる全身の筋肉の強化にもつながりますので、歩行訓練と取り入れる時期のリハビリに効果があると考えます。

7、最後に
私たち、健常者にとっては、何の不自由もない日常生活であったとしても、外傷や加齢により、運動機能に障害を持つと、今まで簡単に出来ていたことが出来なくなってしまいます。これは、この世に生を持ったすべての生き物についても言えることで、最終的には、すべての生き物が、このような障害の状態を持った上で生命を全うしていくものだと言えます。 例えば、交通事故のような大きな事故にあった場合、運動機能障害が短時間の者もいれば、長期間にわたる者もいます。ここで大事なことは、外傷により障害を持ってしまった者には、残存機能をいかに長期間にわたって有効活用し、健常者同様或いは類似した運動機能を維持・回復させることが出来るかであり、加齢により障害を持ってしまった者には、運動機能をいかに維持し、低下することを先送りすることが出来るかです。 すなわち、前項までに記載したとおり、練功十八法は、中国の伝統医学(中医学)と西洋医学の双方が結合して、すべての身体運動の機能回復のために作られたもので、運動療法の一手法として非常に有効なものであります。 従いまして、生体内の結合組織の異常に対処でき、血流循環と体温の上昇を促す軽運動であり、コンディショニングと沈静化の治療体操に位置づけられている練功十八法を外傷や加齢により障害を持った人達に対し、あるいは、高齢の健常者であったとしても、いつまでも自律した生活をしていただくためにも、有効に活用していきたいと考えています。

8、参考文献
○ 「練功十八法」に注目
財団法人 日本スポーツクラブ協会
  理事長:小 野 喬    専門委員:真 浦 良 純

○ やすらぎの脳はα波の出る体操「練功十八法」の運動実験からのレポート
(早稲田大学人間科学部教授・医博)永田 晟

○ ホームページ: http://www.e-taikyokuken.com/
恵香会通信教学テキスト「練功十八法前段」

(※1)「導引」は、漢方の体操療法で、新しい空気を体内に導き入れる深呼吸と自己按摩の体操を併用した一首の長寿法で、全身の気の流れを活発にするものです。

(※2)「五禽戯」は、中国の後漢次代の医者「華陀」が編み出した五種類の動物の動きを真似た最高の気功鍛錬法であると言われています。日々練習することによって、五臓六腑に気をめぐらせ、健康と若さを保つことができると言われています。

(※3)「八段錦」は、中国数千年の歴史の中で受け継がれてきた気功の中でも最も完成度の高い優れた気功の健康法です。八段錦は、一つ一つが独立して八つの動きからなっています。

(※4)「荘子」は、中国の戦国時代の宋国に生まれた思想家で道教の始祖の一人とされる人物です。

(※5)「黄帝内経」は、現存する中国最古の医学書と呼ばれている。古くは鍼経9巻と素問9巻があったとされているが、これら9巻本は散逸して現存せず、現在は王ひょうの編纂した素問と霊枢が元になったものが伝えられています。黄帝が岐伯を始め幾人かの学者に日常の疑問を淘汰したところから素問と呼ばれ、問答形式で記述されています。霊枢は鍼経の別名とされ、素問が基礎理論とすると、霊枢は実践的・技術的に記述されています。

(※6)「華佗」は、中国の後漢末期の薬学・鍼灸に非凡な才能を持つ伝説的な名医です。




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